バブルと呼ばれた時代、日本には多くの外人演奏家やオーケストラが来ました。カラヤンやベームはもちろん、1989年に東京・渋谷にできたオーチャードホールのコケラ落としでは、ジュゼッペシノーポリの指揮で門外不出と言われていたバイロイト音楽祭の引越し公演が行われたほどです。
そんな中にあって、ただ一人日本に呼ぶのは「不可能」と言われていたのがウラジミール・ホロヴィッツでした。なにしろ飛行機に乗るのが大嫌い、年齢的にも80歳を過ぎわざわざ日本に来るはずがないと思われていたのでした。そのホロヴィッツが突然、日本に来たのが1983年。管理人が思うには、ホロヴィッツをどうしても日本に呼びたいという、サントリーの佐治敬三さんの熱意が実を結んだのではないでしょうか。
「ホロヴィッツ来日」のニュースは、クラシック音楽のファンだけではなく、社会的にも話題になりました。新聞などでは発売前からチケットを求めて売り場に並ぶ人たちの姿が掲載されたりしました。とくにチケットが5万円と高額なところが取り上げられ、「熱狂的なファン」という表現が多かったように記憶しています。
日本で一番クラッシクレコードが売れる(当時)、銀座の日本楽器にも行列ができましたが、たしか販売枚数の割り当ては数十枚程度だったと思います。
管理人がコンサート開催のニュースを聞いてまず最初に思ったのが、「えー、なぜにNHKホール」ということでした。それはNHKホールが悪いとは言いませんが、お世辞にもいいとも言えないホールだからです。紅白歌合戦をするにはいい会場かもしれませんが、とてもピアノのソロを聞くような場所ではありません。せっかくホロヴィッツが来るのに「もったいない」の一言です。
プログラムに「ホロヴィッツの来日に寄せて」を寄稿している吉田秀和さんや当時の他の音楽雑誌などでも紹介されていますが、ホロヴィッツに来てもらうということは、大変なことです。
身一つで来て、据え付けられたピアノの前に座ってポロンポロンと弾いてくれれば楽なのですが、そうはいきません。練習用のピアノが2台、本番用の特別に調整された専用のピアノが1台、スタインウェイからはホロヴィッツ専属の調律などをするスタッフ、身の回りを世話するスタッフ、それにホロヴィッツの場合はお気に入りのコックが付いてきます。当然、ホテルも超一流ホテルになり宿泊するだけではなく練習をするスペースも必要になってきます。
あれやこれやを考えると、いったい5万円というチケット価格が高いのか安いのかわからなくなってしまいます。
当日の演奏に関しては、音楽には素人の管理人より、もっとわかりやすく詳細に伝えてくれるページを見つけたのでそこへのリンクを貼っておきます。
信天翁の熟睡 チケット争奪戦
管理人がはるか昔の記憶をたどると、座った席のけっこう近くの前のほうにはサントリーの佐治敬三さんがいました。その他にも、なにかで顔を見たことのある有名人も何人かいました。
そして、演奏会の始まる前のあの独特の静寂が訪れました。管理人はこの一瞬がたまらなく好きです。期待と不安が入り混じったような不思議な時間です。ホロヴィッツはよく写真で見るように背を真っ直ぐに伸ばし、腕を下げたようなスタイルで鍵盤を叩きます。「一つの鍵盤を7色に弾き分ける」と言われていましたが、正直に言うと音の違いはよくわかりません。
この日の演奏については後日、吉田秀和さんが「ひびの入った骨董品」といった表現をしたせいもあり、出来がよくなかった、いや、よかった、などと話題になりました。ただ、管理人が思うにはそんなことを話題にする多くの人は実際にはコンサートに行ってない人たちです。
目の前のホロヴィッツはたしかに鍵盤に指を乗せ、転がすように、ときには叩くように、音楽を生み出していきます。演奏会に行くということは、その瞬間に自分も同じ空間にいて、同じ時間を共有しているわけです。良いと言われる演奏も悪いといわれる演奏も実際にその瞬間に立ち会ってこそ感想というものが持てるわけで、録画や録音ではその場の空気感はとうてい把握出来ません。
コンサートの良し悪しは、実際に聞いてからかなりの時間が経ってからようやく分かるものだと気がついたのは最近です。ホロヴィッツの演奏会は、そういう意味では管理人にとって、とても印象に残る良い時間でした。(2013-02月)
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おなじみのホロヴィッツの写真です。注目したいのは「指」です。太くなった指先と盛り上がった関節が、ピアノからあの素晴らしい音楽を生み出すのでしょうか
当日のプログラムです。ベートーベンのピアノソナタ28番 シューマンの謝肉祭より ショパンの幻想ポロネーズ ショパンの3つの練習曲 ショパンの英雄ポロネーズ このページは日本語です
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